起立性調節障害との闘いの日々① LUNA

起立性調節障害

突然の腹痛

中学2年生になるまで、特に大きな病気をしたことがなく、すくすくと成長をしてきた息子に異変が起きたのは、夏休みが残り1週間になった8月の夜中でした。突然、耐えられないという腹痛を訴えた息子を連れ、夫婦で救急で近所にある大学付属病院の小児科を受診しました。息子はお腹を抑えて、冷や汗を流し半泣き状態。息をするのも辛い、抑えるのはお腹の右側、担当してくださった若手の担当医2名も虫垂炎を疑い、すぐにエコー等で診察をしてくださいました。しかし、虫垂炎の疑いはなく、腹痛原因は分からないまま、息子の痛みに悶える時間だけがただ過ぎていきました。結局、その日は、深夜ということもあり、病院で息子の様子を診ていただくことになり、一旦、小児科に入院して、翌日検査をしていただくことになり私たちは帰宅しました。
帰宅し、私たちはネットで息子の症状を調べたり、素人の浅い知識で、緊急で深夜だったし、今日のところは詳しい検査もしていないようだし、あの様子だと盲腸じゃないかとその時は、医師の言葉も信じず、勝手に息子を盲腸にしていました。

原因不明と葛藤

翌日、病院に行くと、少し痛みが引いたという息子が笑顔を見せました。担当医に呼ばれ、詳細な検査をしても、盲腸ではないことを告げられました。しかし、原因は依然として不明で、本人は痛みをずっと訴えていて、私たちはどうしたらいいのか途方にくれました。痛がる本人を目の前にして、担当医も痛みがずっと続いているのが心配なので、夏休み中だけでも入院を続けて様子を診させていただいてもいいですか、とおっしゃっていただき、私たちは息子のことをそのまま病院にお願いすることになりました。
入院中は、仕事の帰りに着替えとゲーム機を持って息子の病室を訪ね、面会時間ギリギリまで話したり、当時息子がはまっていたゲームを一緒にしたりしました。そんな時は、腹痛のことなどなかったかのように穏やかに過ごせていました。夏休みが終わりに近づいたとき、もうすぐ学校だね、宿題やらないとだね、など私が伝えると、まだお腹が痛いからなど、後ろ向きな言葉が出てきました。この時、初めて学校に行きたくないのか、学校で何かあったのかなと感じました。しかし、来年受験を控えた中学2年生の息子の将来を考えるからこそ、ここで甘えさせるのは違うとあの頃の私は思い込んでいました。

結局、夏休みが終わるので、約1週間で息子は退院となりました。退院時の診察の日、担当医からやはり腹痛の原因は分かりませんでしたが、本人も痛みがだいぶ引いたとのことで、こちらでの治療は以上になります。ただ、また痛みが続くようでしたら違う角度で診察した方が良いのかもしれませんので、また受診してくだいと言われました。その時の私は、担当医のその言葉の意味を取り違えて聞いていました。後になってから、この担当医の言葉の真意に気づくことになるのですが、あの時の私は、あれほど親身になってくださったその担当医が敵のように思えていたのです。

夏休みが終わりに近づき、学校へ行かなければならいことを息子と話した日、私が病院を出た後の息子の様子がおかしかったのを、担当医は見逃さなかったのです。ただ、その時、お母さんと上手くいっていないのか、お母さんは怖いか、うちに帰るより病院にいる方が良いかなど、担当医に聞かれたと、後日、息子が私に伝えたのがきっかけでした。

自分で言うのもどうかと思いますが、いい年して金髪、物おじせず誰とでも積極的に話す性格なため、口うるさい母親がおとなしい息子を黙って従わせているように見えたのかもしれません。でも、素直に担当医との会話を私に伝えてくれるくらい、親子の仲は良かったのです。基本的に子供と同じことをしてコミュニケーションをとるスタイルは、私も夫も同じで、入院中も3人で一緒にゲームをしたり、決して虐待やネグレクトを疑われるような関係性がなかったので、担当医が私のいないところで息子にそれを聞いたことが自分を否定されたような、息子の腹痛の原因が私にあるような疑いをかけられたと思い込んでしまっていました。担当医は、様々な可能性を探っていただけだというのに。

続く腹痛と登校拒否

退院をしたものの、結局、2学期の始業式から登校が出来ませんでした。食欲はあり、夜になると明日は学校に行けると明るい声で言われるのですが、朝になると、お腹が痛いとベッドからも起きられない日々が続いていきました。来年の受験に向けて、大事な中学2年生の2学期。母親として、私の方が焦っていました。朝、起きてこない息子を叩き起こし、今がいかに大事な時期か言って聞かせ、一向に学校に行こうとしない息子にイライラして、時には罵倒し、無理やり学校に行かせていました。しかし、朝、遅刻して家を出かけるものの、共働きの私たちが仕事に出てしまうと息子は家に帰ってきてしまっていました。
学校にも行けないほど、腹痛もずっと続いているらしく、やはりなにかお腹の病気なのではないかと夫婦で話し合い、少し前に小学生のお子さんが盲腸になって手術をしたという病院を知り合いから進められて、前回とは違うその大学病院の診察を受けることにしました。退院の時、痛みが続くようでしたら、受診してくださいと言っていたあの担当医のところに行くことも頭にありました。でも、私のわだかまりが、息子をそこへ行くことを躊躇させていました。

起立性調節障害

紹介状がないため、事前に電話で小児科に連絡し、診察をしていただけるのか確認することから始めました。8月に盲腸の疑いで入院したものの盲腸ではなく、腹痛の原因もわからず、10月になっても腹痛が続いていて、学校にも行けていない旨を、受付の看護師さんに伝えると、状況は分かりましたということで、すぐに小児科の予約を入れていただきました。仕事の休みをもらって、息子と2人で家から少し離れた新しい大学病院に行きました。初診手続きをすると、小児科専用の待合室で、乳幼児や小学生がほとんどの中、息子と2人、緊張をしながら順番を待ちました。体の大きな中学生が1人、そこにいるのはなんだか異様な感じでしたが、私は痛みに苦しむ息子をなんとか助けたくて必死でした。

大きな大学病院なので、小児科にもたくさんの医師が所属していました。やっぱり盲腸かもしれないから知り合いの方がお世話になった先生になるのかなど、2人で待合室で話していましたが、息子が診察室に呼ばれると、そこには初老の優しそうなおじいちゃん先生が私たちを迎えてくれました。
まず、私が状況をお話ししました。その後、息子に学校生活や家庭での生活など、孫と話しをするような感じで話しかけ、息子も楽しそうに様々なことを話しやすそうに話していました。ただ、息子は、私から再三に渡り、学校に行けないことを悪いことのように言われていたので、先生に話すときも自分が悪いので学校に行けないというようなニュアンスで話していました。先生は、黙って息子の話を聞いた後、私たちに向かって優しく微笑むと、これから検査をしてみましょうと、別室で検査になりました。ベッドにしばらく横になって血圧や脈拍を測定した後、立ち上がり、また血圧や脈拍を測定するということを繰り返しました。そして、再び診察室に戻り先生から言われました。

「お母さん、息子さんは盲腸などの疾患があるわけではありません。また、朝起きられないのも怠けている訳ではないのです。息子さんは、起立性調節障害です。これは、自律神経系の異常で循環器系の調節がうまくいかなくなる疾患なのです」

私も息子も、起立性調節障害ってなんだ??と頭にハテナが並んでました。でも、先生は、大丈夫。ゆっくり治療していきましょうと息子に笑顔で言って下さり、私はその疾患について、全く理解していないながらも、腹痛の原因が判明したことにひとまず安堵していました。しかし、ここから私たち家族と起立性調節障害との闘いの日々が始まりました。

(起立性調節障害と母親としての闘いの日々②に続く)

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